1 趣 旨
20世紀から21世紀にかけて急速に進行している地球温暖化は、世界各地で多くの不測の事態を引き起こしています。人類が利用可能な淡水資源の45%を占める湖沼においても例外ではありません。例えば、チベットやモンゴルでは、氷河や永久凍土の溶解で湖の水位が上昇し、時として氾濫を引き起こしています。一方、乾燥地帯では、砂漠化が進行し、湖が消滅したり、塩湖化したりしています。
日本最大の湖であるびわ湖は、400万年の長い歴史を刻み、世界で最も古い湖の一つです。
びわ湖は、関西に住む1400万人の人々の生命の源であるだけでなく、全国の湖沼水量の34%を占めています。ところが、びわ湖周辺では、過去10年間に0.7℃という、これまでに経験したことのない急激な気温上昇により、大きな環境異変が起きています。そのひとつが深水層の低酸素化現象です。
急速に進行する地球温暖化や人間活動による自然破壊から、かけがえのないびわ湖の環境を守り、その豊かな自然を健全な形で後世の人々に残すことは、私たち人類の義務であり責任であると考えます。そのためには、びわ湖に関心を持つ多くの人々や様々な組織が、びわ湖とその集水域における正確な情報や教育資源を共有し、何をなすべきかを共に考え、適切な行動を起こす必要があります。
地球温暖化からびわ湖を守るには、質の高い情報公開と相互の連携が不可欠なのです。また、緊急かつ大規模な調査や修復に向けた技術開発も必要です。その時々の財政事情や政治状況に左右されることなく、長期的に信頼性の高い調査研究をできる体制づくりが、いま求められています。
このたび、このような事態を憂慮した有志が集まり、多くの賛同者を募り、びわ湖を主とした湖沼の調査研究や環境再生を支援し、最先端の調査船や計測機器を共同運用すると共に、最新の湖沼情報を迅速に公開し、将来にわたって健全なびわ湖を保全するための環境教育や連携を行うことを目的として特定非営利活動法人びわ湖トラストを設立することにしました。
2 申請に至るまでの経過
滋賀県は従来からびわ湖の調査研究に力を入れており、中でも「湖中探査先端技術化計画」に基づき開発された自律型潜水ロボット「淡探(たんたん)」と実験調査船「はっけん号」による調査・研究活動は、全国にない先駆的取り組みです。ところが、県の財政難により、平成20年度から淡探・はっけん号の運用が凍結される予定であることがわかり、これを危惧した有志で勉強会を始めました。
この状況は、たびたび新聞・TVなどで取り上げられ、県内外からの関心も高く、平成19年12月に提出した滋賀県知事宛ての「淡探・はっけん号を利用した調査研究の継続と拡充を求める要望書」には、約1週間で3175名もの署名が集まりました。
そこで、この事態を憂慮した有志が集まり、知恵や技術を出し合いびわ湖の健康を取り戻す技術者・研究者の活動を支え、次代を担う子どもたちにびわ湖をつなぐ架け橋として特定非営利活動法人びわ湖トラスト設立の準備を始めました。平成20年1月19日に発起人会を立ち上げ、その後5回の準備会を経て、4月12日に(任意団体)びわ湖トラストの発足式を行い、組織としての活動を開始しました。